都と陵はまたこの家で一緒に暮らし始めるのだった。人生の最も謎めいた部分に迫る長編小説。死が揺さぶる時間。

姉弟のおさえきれない欲望とはなんだろう。
陵が言った「だだっぴろくて白い野」とは心の空白のことではないのか。
ママの呪縛から彼らが解かれた時、白い鳥が元いた場所に戻るとき、抜けていた記憶が蘇る。
そこはあまりにも冷たく、静謐に満ちている。
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12年前に夫の礼は失踪した、「真鶴」という言葉を日記に残して。京は、母親、一人娘の百と三人で暮らしを営む。不在の夫に思いをはせつつ新しい恋人と逢瀬を重ねている京は何かに惹かれるように、東京と真鶴の間を往還するのだった。京についてくる目に見えない女は何を伝えようとしているのか。遙かな視線の物語。

真鶴という場所は、私の中で不思議な場所だ。
徳永京が夫を求めて彷徨ったように、この歌もまた行き場を知らず彷徨っている。
ぼんやりと灯された薄紫の明かりの中で、同じところをぐるぐる廻るような錯覚を覚える。
終わりなんてないんじゃないかとさえ思えてくる。
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主人公の名前が月子であることと、この小説には月が印象的に描かれること、おだやかで幸福な感じの曲調も合っていると思いました。
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いつも束の間の逢瀬しかできない2人。年末の一日、初めて過ごした2人だけの長い時間。鍋を準備して、「おかえり」「ただいま」と言い合って(「冬一日」)。ショウコさんと旅に出る。電話の最中に「なんかやんなっちゃった」と声が揃ってしまったのだ(「春の虫」)。いつか別れる私たちのこの一瞬をいとおしむ短篇集。

「西暦三千年一月一日のわたしたちへ」と書かれた序文から、手紙は未来を描いているのだと見当がつく。

郷愁と物悲しさ、そして「あなた」に向けた慈愛の気持ち。
この感情を忘れたくない。
今も、そしてこれからの時代も。
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